家族3人のそれぞれのものがたり
これは、3階建ての家に住む、母、息子、父から見た
それぞれのはなし、それぞれの世界。
“ふつう”だけど、完璧じゃないけど、
かけがえのない今日を、大切に想えるように。
THREEを舞台に3つのものがたりが描き出す、家族の毎日に想いを馳せて。
陽がだんだん短く、陽が落ちると一層肌寒くなってきた、
10月の終わり。
キッチンから中庭の樹の頭だけ見える。
赤く染まった葉が、乾いた風に揺れている。
ぼーっと手早く家事をしていると、昔のことをふと思い出す。
am11:24 「暇、なにしてる?」
「進学説明会行ってきた、今から予備校」 pm15:35
スマートフォンにうつる友人からのメッセージを見つめ、
深くため息をついた。
引退試合が終わり、いよいよ受験本番だというのに全く身が入らない僕は、勉強モードにうまく切り替えた友人を見てただただ焦っている毎日をすごしている。
夕方には仕事を終えて風呂場へ向かい、
何を考えるでもなく湯船に浸かっていると、
気付いたら30分が経過していた。
うちの風呂は3階にあり、中庭に面した窓で採光が取れる。
外の空気を入れながら、暗くなっていく空を眺めていると、
仕事のことは忘れられる。
穏やかな気持ちが続かないのは、
息子のことを考えていたからだった。